基本情報技術者試験、応用情報技術者試験でも出題されるシステム移行方式について、メリット・デメリットをまとめました。
移行が必要になる理由は?
システムはある程度経つと入れ替え(リプレース)が必要となります。それは、システムを運用しているうちにシステム自体が古くなると、動作が重くなってきたり、故障が増えてくることがあります。そういった悪影響を予防・改善するために入れ替えを行いシステムの移行が必要になるのです。
システム移行方法は、システムの仕様や重要度によって適切な方法を選択しなければなりません。
また、システム移行時には、運用テストなどのテストが必要で、問題が発生したらもとに戻すことも考慮することが重要です。
各システム移行方式の特徴
一斉移行方式(一括移行方式)
旧システム(現行システム)を停止し、全システムを一斉に新システムへ移行する方式です。
メリット
- 移行期間が短い。
- 手間やコストが最も小さい。
デメリット
- 移行する際、システムを停止する必要がある。
- 移行後、トラブル発生した時の影響(リスク)が大きい。
- トラブルが起き、旧システムに戻すこととなった場合の費用・損失が大きい。
- 移行前の詳細な計画立案、新システムへの高い信頼性が必要になる。
順次移行方式(段階的移行方式)
業務・機能などの単位で移行する部分を分割し、その単位ごとに段階的に移行していく方式です。 一斉移行方式とは逆の方式です。
メリット
- 運用部門の負荷が少ない。
- トラブルが発生しても、その影響を局所化・極小化できる。
デメリット
- コストは一斉移行方式(一括移行方式)より高い。
並行運用方式
平行運用方式と書いてしまいそうになりますが、「並行」運用方式です。
- 新旧のシステムを同時並行で運用し、徐々に新システムへ移行する。
- 移行する際、移行した結果を比較・検証する。旧システムと新システムの互換性が大事。
メリット
- トラブルが発生しても、その影響を局所化・極小化できる。
- 安全性が高く、移行時の影響(リスク)は低い。
デメリット
- 手間、移行時間、コストともに高い。
パイロット移行方式
- 特定の部門(パイロットシステム)を先行して、新システムに移行・検証します。
- 問題がなければ、残りの部分も移行します。
- 他の移行方式と違うのは、特定の部門を移行した後、十分検証するという点です。一斉移行方式と段階移行方式の中間といったイメージです。
メリット
- トラブルが発生しても、その影響を局所化・極小化できる。
デメリット
- 完全移行までに時間がかかる。
単純移行方式
応用情報技術者試験の平成26年春期 午後問題(問9 プロジェクトマネジメント システム再構築)で出てきた単純移行方式ですが、情報が少なく、どういう移行方式なのか本などで色々しらべてみたところ、下記のような特徴がわかりました。
- 新システムへ一度に移行する単純な方式で、旧システムはなくなる(停止する)。
メリット
- 移行期間が短い。
デメリット
- 新システムに不具合がある場合、大きな影響がでてしまう。
- 移行する手順は簡単なものの、他の方式より移行時のリスクが大きいため、高い信頼性が必要。
一斉移行方式=単純移行方式というような情報は見当たらなかったのですが、特徴を見てみると一斉移行方式とほぼ同じようです。
部分移行方式
単純移行方式と同様、情報が少ないです。下記のような特徴があります。
- 徐々に移行するシステムを拡大していきます。
- 旧システムをサブシステム(大きなシステムの一部)に分割し、一部のサブシステムを先行的に新システムに移行します。
メリット
- トラブルが発生しても、その影響を局所化・極小化できる。
順次移行方式と似ていますがシステムをサブシステムに分割する、というところが特徴的です。
アキ4各移行方式まとめ
表の補足ですが、低い<低め<高め<高いの順です。
単純移行方式と部分移行方式の情報が少ないので、特徴から判断しています。
名前 | コスト | 移行期間 | リスク |
---|---|---|---|
一斉移行方式 | 低い | 短い | 高い |
順次移行方式 | 高め | 長め | 低め |
並行運用方式 | 高い | 長い | 低い |
パイロット移行方式 | 高め | 長い | 低め |
単純移行方式 | 低い | 短い | 高い |
部分移行方式 | 高め | 長め | 低め |
午前問題
- ア 機能的に閉じたサブシステム単位に、短期間で順次移行していくので、運用部門の負荷が少なく、問題が発生しても当該サブシステム内に抑えることができる。
- イ 限定した部門で新システムを導入・観察した後にほかの全部門を移行するので、移行に関する問題が発生しても影響範囲を局所化できる。
- ウ 新・旧両システム分のリソースを用意し、並行稼動させるので、新システムで問題が発生しても業務への影響を最小にできる。
- エ ほかの移行方式に比べると移行期間は短くできるが、事前に全部門との間で詳細な計画を立てるとともに、新システムに高い信頼性が要求される。